著者は「星宮眞沙美」という芸名で戦後に活躍した元娘役ジェンヌだ。1943年音楽学校入学、1945年入団、1957年退団という、日本が最も大変だった時代に宝塚を支えた一人。 この本は著者が宝塚で過ごした日々を振り返る回想録である。また所々にコラムが差し込まれて、宝塚豆知識を教えてくれる。

柔らかな文章によって紐解かれる、私たちには遠い昔の宝塚の世界。ちょうど春日野八千代氏や越路吹雪氏の活躍した時代だ。 以前にあった「愛と青春の宝塚」というドラマの時代とも重なる。ちなみにこのドラマには、朝丘雪路氏、鳳八千代氏と共に久世氏も退団した先輩ジェンヌ役で登場する。 他の2名との年齢差がありすぎるのに全然違和感がなかった。さすが老け役上手な久世氏。

戦中、戦後という時代の中で、今では考えられないような苦労話が綴られる。食料事情厳しかった中で、うら若きジェンヌ達が工夫してお腹を膨らますのだが、あの八千草薫氏がお米を借りにきたという逸話まであった。また伝染病蔓延のため外出禁止令が出た際、宿舎に缶詰になった団員を楽しませるために越路吹雪氏が即席のストリップ(?)ショーを行ったとか。

著者が在団していた頃は、春日野八千代氏、越路吹雪氏の両男役スターの人気が団内でも絶大だったらしい。誰もが認める正統派二枚目スターの春日野氏、ルックスはそうでもないのに不思議な魅力で人を虜にする越路氏。両名とも私にとってはもう歴史上の人物くらい遠い存在だが、そんな人たちを身近に感じられるようなエピソードがいくつか出てくる。

著者を含めて、登場するジェンヌでよく知る名はほぼないが、宝塚のさまざまな歴史を知れるのは面白かった。剣幸氏トップ時代の上演作「南の哀愁」がどういう作品だったかが書かれていたり。 過去のいきさつを知ることで、後に再演されたものを見る時もまた違った見方ができる。

相方に導かれ、久世星佳氏に落ち着いた私の宝塚の世界。こうやって過去の宝塚に触れることで、また世界が広がりそうだ。そのうち現役ジェンヌの鑑賞に走ったりするのだろうか…。







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